2026.08.13Business

【AI導入実例①】10時間の経理事務が、10分に領収書は撮るだけの自動記帳溜まっていた208枚の領収書を、撮ってフォルダに入れるだけで一覧表に。手入力なら10時間かかっていた作業が10分で終わり、月額費用は増えていません。実際にお渡ししている仕組みをそのままご紹介します。

経費精算は、成果に直結しないにもかかわらず、担当者の時間を確実に消費する業務です。領収書をスマートフォンで撮影してフォルダに保存するだけで、日付・支払先・金額・税率・インボイス登録番号が自動的に一覧表へ記録される仕組みをご紹介します。溜まっていた208枚を処理しました。手入力なら10時間かかっていた作業が、撮影の10分で終わっています。運用にあたって新たな月額費用は発生していません。

1. ご相談で最も多いのは、経費精算にかかる作業です

業務効率化のご相談は、業種や企業規模が異なっても、似た業務に行き着きます。

私は普段、企業のAI活用を設計し、実際に運用できる状態にしてお渡しする仕事をしています。ご相談は「AIで何かできないか」という漠然とした形で始まることがほとんどです。そこから現在の業務をうかがっていくと、負担として挙がる業務は驚くほど重なります。この段階を飛ばして道具から入った導入がなぜ成果につながらないのかは、生成AI導入で効果が出ない理由で調査データをもとに整理しています。

最も多くご相談いただくのが、領収書の処理をはじめとする経費精算です。次いでメールの返信作成、そしてファイル名や書類の整理が続きます。ご相談いただく業種は、内装工事会社から製造業、飲食、教育まで幅広いのですが、担当者が疲弊している業務は共通しています。

いずれも、正確さを求められる一方で、成果に直結しない業務です。誰かが処理しなければ決算は締まりません。しかし、どれだけ丁寧に処理しても売上は増えません。だからこそ後回しになり、担当者の手元に積み上がります。

本記事では、ご相談の多い領収書処理について、実際にお渡ししている仕組みをそのままご紹介します。私自身の経理業務でも運用しているものです。

2. 処理が滞る原因は、作業量ではなく確認事項の多さにあります

領収書の処理が滞るのは枚数が多いからではなく、1枚ごとに経費区分・勘定科目・税率を確認する必要があるためです。

「まとまった時間を確保すれば終わる」とお考えの方が多いのですが、実際に着手すると事情が違うことがわかります。着手して初めて見えるのは、枚数の多さではなく、1枚ごとに確認が発生する仕組みそのものです。

具体的には、次の3点を毎回確認することになります。

  • 経費に計上できるかどうか(打ち合わせで利用した飲食か、私的な支出か)
  • どの勘定科目を選ぶか(同じ飲食でも会議費、消耗品費、旅費交通費に分かれます)
  • 税率がどちらか(標準税率10%か、軽減税率8%か。1枚の領収書に両方が記載されている場合もあります)

1枚あたりの確認は数秒でも、100枚あれば100回繰り返すことになります。しかも確認には集中力を要するため、疲労とともに処理速度が落ちていきます。

作業が中断する場面も共通しています。判断に迷う1枚が出てきたときです。数か月前の領収書を前にして、どの案件の支出だったかを思い出せず、そのまま脇に置いてしまいます。その1枚を飛ばして先へ進むと、後続の処理も止まりがちになります。

つまり削減すべきなのは処理時間ではなく、担当者が確認しなければならない回数そのものです。

3. 撮影して保存すれば、あとは自動的に記録されます

やることは、領収書をスマートフォンで撮影してフォルダに保存するだけです。あとは日付・支払先・金額・税率・インボイス登録番号まで、自動的に一覧表へ記録されていきます。

仕組みそのものは複雑ではありません。領収書を撮影し、クラウド上の「未処理」フォルダに保存します。入力の作業はここで終わりです。5分ごとに処理が実行され、AIが画像を読み取って、表計算シートへ1行ずつ記録していきます。読み取りを終えた画像は「処理済み」フォルダへ自動的に移動します。

読み取りはクラウド上で実行されるため、社内のパソコンを起動しておく必要はありません。担当者が退社したあとでも処理は進みます。

記録される項目は、全部で12項目あります。日付、支払先、金額(税込)、消費税額、税率、勘定科目、摘要、インボイス登録番号、画像リンク、ファイル名、処理日時、重複の有無です。

実際に記録された1行をご紹介します。空港連絡バスの領収書を撮影した結果です。

日付支払先金額税率勘定科目摘要
2026-04-05東京空港交通株式会社1,00010%旅費交通費空港リムジンバス乗車券(片道)

画像から支払先を読み取り、金額を抽出し、税率を判定して、勘定科目まで提示します。インボイス制度(適格請求書等保存方式)の登録番号も、同じ行に記録されます。

私の場合は、処理できずに溜まっていた領収書をまとめて投入しました。2026年4月7日から13日までの1週間で170件を記録しています。最も多かった4月9日は、1日で69件です。その後も、受け取るたびに撮影を続けています。これまでに記録した件数は208件になりました。

手入力していた頃は、1枚あたり3分ほどかかっていました。日付を読み、店名を打ち、金額と税率を確認して、勘定科目を選ぶ。208枚なら10時間です。

いまは、208枚を撮ってフォルダに入れるまでが10分ほどです。1枚あたり3秒。同じ208枚にかかる時間が、10時間から10分になりました。入力していた3分が、撮影の3秒に変わったということです。

同じ日付・同じ支払先・同じ金額の領収書が重複して登録された場合は、該当行の背景色が変わるため、二重計上も防げます。

4. 業種に合わせて勘定科目を設定し直したうえでお渡しします

読み取りと記録の処理は共通のまま、勘定科目の設定だけを各社の実態に合わせて変更しています。

既存のサービスとの違いは、この点にあります。同じ読み取り機能でも、提示される勘定科目が自社の帳簿と合っていなければ、結局は担当者が修正することになります。それでは作業が減りません。ですから、お渡しする前に業種ごとの設定へ変更しています。

業種設定する主な勘定科目
内装工事会社材料費・外注費・車両費
ベーカリー仕入高・修繕費
飲食店仕入高・消耗品費・会議費

勘定科目の設定を変更するだけで、読み取り処理そのものはどの業種でも共通です。稼働実績のある構成を複製したうえで、各社の設定に合わせて進めます。この進め方であれば、開発期間を短縮でき、想定どおりに動作しない事態も避けられます。

設定は顧問税理士が使用している勘定科目に合わせるのが確実です。導入前に科目の一覧をご提供いただければ、そのとおりに設定した状態でお渡しします。

同じ考え方で、受信メールへの返信案を自動的に下書きへ保存する仕組みや、命名規則から外れたファイルを検出して承認後に一括変更する仕組みもお渡ししてきました。どれも、丁寧さは必要でも、それ自体が売上や利益を生むわけではない業務です。

5. 読み取りの精度は、出力を見ながら上げていきます

AIの読み取り精度は、指示の書き方と設定を調整することで上がります。

導入したばかりの頃は、日付の読み取りに誤りが混じっていました。そこで記録済みの208件から30枚を無作為に抽出し、元の画像と1枚ずつ照合して、項目ごとにどれだけ合っているかを数えました。調整の前後を同じ基準で採点しています(領収書に印字のない項目は採点から除いています)。

項目調整前調整後
日付96.7%100%
支払先100%100%
金額(税込)100%100%
消費税額91.3%95.7%
税率88.9%96.3%
項目全体95.7%98.6%

直したのは、AIへの指示の書き方と設定だけです。仕組みそのものは作り直していません。読み取れない項目は空欄にする、推測で埋めない、といった条件を明示し、出力のばらつきをなくす設定に変えました。この調整で、日付は30枚すべてが正しく読めるようになりました。

やっていることは、出力を見て原因を当て、指示に反映するという往復です。どこを見れば異常に気づけるか、どの順序で直せば効くかは、業務の効率化を重ねてきた経験がそのまま生きます。AIそのものの知識より、業務の流れを分解して手順に落とす力のほうが効く場面が多いと感じています。

あわせて、記録した全行に検算をかける仕組みも入れています。税込金額と税率から消費税額を計算して突き合わせ、合わない行だけを色と理由付きで示します。人が確認すべき行を計算で決めているので、全部を見直す必要はありません。

6. 自動化する範囲と、人が確認する範囲を分けて設計しています

AIが担うのは読み取りと記録まで、税務上の判断は担当者と税理士に残す。この線引きを最初に決めてからお渡ししています。

手順書には「AIに判断させない項目」を明記しています。たとえば、高額な物品を経費と資産のどちらに計上するかの判定や、個人に支払う報酬の源泉徴収です。

自動化しない理由は、読み取り精度ではありません。判定の基準そのものが改正で変わるためです。国税庁が公開している解説にも「令和7年4月1日現在の法令等」のように基準日が明記されています。その時点の基準を組み込んだ仕組みは、改正された瞬間から誤った判定を返し続けますが、その誤りは表面化しません。

ですから一覧表の勘定科目欄も、候補の提示にとどめています。読み取りと記録は任せ、判断は人が持つ。この分け方を先に決めておくと、運用が始まってから迷いません。

Marumakeは、AIと戦略設計を組み合わせて企業のマーケティングと業務改善を支援する会社です。何を自動化するかと同じだけ、何を自動化しないかをあらかじめ定めることが、設計の重要な部分だと考えています。

7. 導入までの進め方と、費用の考え方をご説明します

この仕組みは、すでにご利用中のGoogle Workspaceの機能の範囲で動作するため、運用にあたって新たな月額費用は発生しません。

導入は次の順序で進みます。はじめに現在の業務をうかがいます。月間の処理件数、現在の担当者、顧問税理士が使用している勘定科目などです。次に、うかがった内容に合わせて設定を調整します。稼働実績のある構成を複製して調整するため、最短1週間でお渡しできます。

お渡しするのは、仕組み本体、画面操作の手順書、そして実際に使う方向けの利用ガイドです。受け取った側だけで運用を継続できる状態にしてお渡しします。運用のたびに当社の作業が必要になる設計は採用していません。

費用についても申し上げます。処理を実行しているのは、すでにご利用中のGoogle Workspaceに標準で含まれる機能です。専用のサーバーも、他社サービスの追加契約も必要としないため、毎月の固定費は増えません。

読み取りに使う生成AIの費用は、使った分だけかかります。実測では1枚あたり0.04円ほどで、208枚を処理しても8円ほどです。月に500枚処理しても20円程度に収まります。無料で使える範囲も設けられています。料金は変わることがありますので、導入前に最新の条件を確認してご案内します。

一方で、社内の面談記録や目標管理を1つの画面に集約するような業務システムになると、規模が変わります。運用費用が発生しないものと、お見積もりが必要なものは、最初の段階で明確に区別してご案内します。

まずは1週間分の領収書でお試しいただくことをおすすめしています。撮影方法を決め、勘定科目を整理し、1週間分を処理したうえで、出力された一覧表を顧問税理士にご確認いただきます。この順序で進めていただくと、導入後の手戻りが起きません。

なお、領収書処理はご相談の中でも着手しやすい入り口ですが、そもそも何から手をつけるべきかで迷う場合の考え方は、AI・DX導入で成否を分けるポイントにまとめています。目的を一文で書けるかどうかで、その後の進み方が変わります。

よくあるご質問

Q. この仕組みだけで、電子帳簿保存法の要件を満たせますか?

この仕組みが担うのは、入力作業の代行までです。電子帳簿保存法のスキャナ保存には、解像度やタイムスタンプ、検索機能など別の要件が定められています。紙の原本を破棄して電子データだけで保存される場合は、要件を満たすかどうかを顧問税理士にご確認ください。

紙の原本を保管したまま入力の手間だけを減らす使い方であれば、この点を気にせず始められます。

Q. 現在使用している会計ソフトは解約すべきでしょうか?

まずは並行して使ってみてください。この仕組みが受け持つのは、紙の領収書をデータ化する工程です。出力された一覧表はCSVやExcelで書き出せるので、会計ソフトへの取り込みにも、税理士への提出にも使えます。

手入力していた分がこちらに移っていくため、慣れるにつれて会計ソフト側の作業は、入力ではなく確認と申告に寄っていきます。移す範囲は少しずつ広げていくのが確実です。

Q. 手書きの領収書も読み取れますか?

読み取れます。ただし印字された領収書に比べると正確さは下がるため、計算が合わない行には色が付くようにしています。色が付いた行だけ元の画像と見比べれば済むので、全部を確認する必要はありません。

Q. どのくらいの期間でお渡しいただけますか?

最短で1週間です。すでに動いている構成をベースに設定を調整するため、ゼロから開発するより早く仕上がります。読み取る書類の種類が多い場合や、勘定科目の整理から始める場合は、その分お時間をいただきます。

Q. 領収書以外の業務にも対応いただけますか?

はい。受信メールへの返信案を下書きに保存する仕組み、ファイル名を命名規則に合わせて整える仕組み、面談記録と目標管理を1画面に集約する社内システムなどをお渡ししてきました。正確さは求められるものの成果に直結しない業務であれば、まずはご相談ください。

8. 貴社の場合にどう適用できるかを、一緒に検討します

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本記事でご紹介したのは、私自身の経理業務で運用し、そのうえで内装工事会社、ベーカリー、飲食店へ業種ごとに設定を変えてお渡ししてきた仕組みです。何を変更すれば各社の実態に合うのか、どこは共通のままで問題ないのかは、実際に導入を重ねて把握してきました。

貴社の業務にどう適用できるかをお知りになりたい場合は、お気軽にご相談ください。ご相談は無料でお受けしています。

ご相談の際、次の4点をお知らせいただけますと、具体的な検討に進みやすくなります。わかる範囲で結構です。

  • 月間の領収書の発生件数
  • 現在ご使用の会計ソフト(未導入の場合はその旨)
  • Google Workspace のご利用有無
  • 顧問税理士の有無

領収書以外の業務でも構いません。「この作業を効率化できないか」という形でお持ちいただければ、そこから整理してご提案します。

この記事は、実際にお渡ししてきた仕組みを1つずつご紹介するシリーズの1本目です。メールの返信案の下書き、ファイル名の一括整理、面談記録と目標管理の集約なども、順に取り上げていきます。

この記事を書いた人

青木一剛(あおき・いっこう)。外資系IT企業で広告プロダクトのマーケティングを担当し、アカウントストラテジスト時代を含め300社超のマーケティングを支援。Marumake代表として中小企業のAI導入とマーケティングを伴走支援するほか、デジタル庁デジタル推進委員、総務省地域情報化アドバイザーを務める。

免責事項

本記事は税務・法務上の助言ではありません。制度の要件や金額の基準は改正により変わります。個別の適用は顧問税理士にご確認ください。国税庁の各ページは2026年8月12日に確認したものです。

「手入力は1枚3分・208枚で10時間」「撮影は1枚3秒・208枚で10分」は、筆者の実感に基づく試算です。計測値ではありません。

本記事に記載した208件の処理実績および照合結果は、筆者が自身の経理業務で使用している表計算シートを2026年8月12日時点で集計し、無作為抽出した30枚については元画像と1枚ずつ照合したものです。

本記事の見解は個人の見解であり、所属・顧問先機関を代表するものではありません。

参考文献

#内容出典確認
1スキャナ保存の要件(解像度・階調・タイムスタンプまたは訂正削除の履歴)国税庁「Ⅱ 適用要件【基本的事項】」2026.08閲覧
2スキャナ保存の要件の概要(取引年月日・取引金額・取引先による検索機能の確保)国税庁「Ⅰ 申請書【要件の概要】」2026.08閲覧
3制度の基準日が明記されている例(令和7年4月1日現在の法令等による)国税庁 タックスアンサー No.54082026.08閲覧

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