2026.06.13Business

生成AI導入で効果が出ない理由利用88.8%でも「業務を任せる」は2.4%利用率88.8%・成果実感9%・組織活用の差27ポイント——5つの調査データと導入支援の現場から、「生成AI活用格差」が生まれる原因と、1日75分を生む使い手に追いつくための設計を解説します。

本記事は2026年6月時点の情報をもとに執筆しています。

社内を見回してみてください。調べ物、メールの下書き、議事録の要約——気づけば、生成AIを使う社員は珍しくなくなったのではないでしょうか。

ただ、「会社として何が変わったのか」と聞かれると、言葉に詰まる。もしそうなら、この記事はあなたの会社のために書いています。

1. 生成AIを「使う人」は、もう9割に近づいています

日常的にSaaSを使う管理部門・専門部門のビジネスパーソンの88.8%が、すでに業務で生成AIやAIエージェントを活用しています(KiteRa調査、2026年5月)。

数字の出どころから確認します。株式会社KiteRaが2026年5月に実施した調査では、SaaSを日常的に使う管理部門・専門部門の20〜59歳ビジネスパーソン1,087名のうち、88.8%が業務で何らかの形で生成AIやAIエージェント(AIが指示に沿って作業を自動で進める仕組み)を使っていると回答しました。

デジタルツールに慣れた層の数字とはいえ、約9割です。問いは「生成AIを使えるかどうか」から「どう使うか」へ移っています。

ところが、経営者の方とお話しすると、返ってくる言葉は対照的です。「社員は使っているようだけれど、会社の数字や業務がどう変わったかは説明できない」。Marumakeの導入支援でも、よくいただくご相談です。

使う人は増えた。なのに、成果の実感がない。この記事では、その原因を5つの調査データと支援現場の実例から解きほぐします。そして「入れただけ」から抜け出し、今から差をつける側に回るための設計をお伝えします。

2. 生成AI活用の3つのギャップ——「広く浅く」で止まる構造

生成AIの利用率は9割に近づく一方、AIエージェントに業務を任せられている人は2.4%にとどまります(KiteRa調査、2026年5月)。

「普及」と「活用」のあいだに何が起きているのか。調査データを並べると、3つのギャップが見えてきます。

  • 「深さのギャップ」(個人):利用率88.8%に対し、AIエージェントで業務を自動化できている人は2.4%(KiteRa調査、2026年5月)。利用頻度でも「たまに使う」が53.9%と、「常に使う」35.7%を上回ります。多くの人が、調べ物や文章補助という入り口で止まっています。
  • 「成果のギャップ」(大企業):PwC Japanグループの6カ国比較調査(売上高500億円以上の企業の課長職以上、2026年6月公表)では、日本の生成AI活用・推進度は87%。しかし「期待を大きく上回る効果」を得た企業は9%で、6カ国中で最も低い結果でした(米国38%、英国32%)。効果をまだ評価していない企業も13%にのぼります(米国は0%)。
  • 「組織のギャップ」(規模間):東京商工リサーチが6,327社に行った調査(2026年4月)では、組織的に生成AI活用を進める企業は大企業59.1%に対し、中小企業32.3%。約27ポイントの開きがあり、中小企業の38.7%は「方針を決めていない」と回答しています。

同じ構図は、業界単位でも観察できます。施工現場のICT化が87%まで進んだ建設業界でも、入居者対応など顧客接点での生成AI活用は9.4%にとどまっていました。詳しくは建設・不動産の入居者対応AI|現場DXが進んでも電話が減らない理由で解説しています。

3つのギャップに共通するのは、「導入率」と「成果」が別物だという点です。この記事では、普及と成果のあいだに広がる差を「生成AI活用格差」と呼びます。入れることと活かすことのあいだには、設計という工程があります。

3. 導入支援の現場で見えること——上場企業も地方企業も、スタートラインはほぼ同じです

導入支援の現場では、上場企業と地方の中小企業のあいだで、生成AI活用の理解度に大きな差は見られません。これが書き手の実感です。

少し自己紹介をさせてください。私は外資系IT企業で広告プロダクトのマーケティングに携わりながら、Marumakeとして中小企業のAI導入とマーケティングを支援しています。これまで支援した企業は300社を超えます。

その現場で、経営者の方々から聞く言葉は驚くほど似ています。「何から始めればいいか分からない」「時間がない」「自社の業務のどこに使えるのか、イメージが湧かない」。

これは感覚だけの話ではありません。中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月公表)でも、中小企業のAI活用の困りごとは「成功事例などの情報が足りない」が83.3%で最多。「製品やベンダーを選ぶ情報が足りない」も79.8%にのぼります。製造・生産の現場に絞るとAI導入率は34.9%で、総務・管理部門より低い水準です。進んでいないのは、あなたの会社だけではありません。

一方で、具体的な活用例を一つひとつお見せすると、その場で空気が変わります。「それなら、あの業務に使える」。漠然とした不安が、やってみたい業務の名前に変わる瞬間です。実際に、その場で「来週から試してみる」と動き出した経営者の方もいます。

支援を重ねるほど、強く感じることがあります。上場企業でも地方の中小企業でも、生成AIの「使いこなし」のレベルは、現時点でそれほど変わりません。生成AIを業務の形に落とし込める人が、まだ世の中に少ないのです。

企業規模に関係なく、多くの会社がほぼ同じスタートラインに立っています。この感覚は、データとも一致します。大企業でも「期待を大きく上回る効果」を出せたのは9%にとどまっていました。

Marumakeは、AIと戦略設計で中小企業のマーケティングと業務改善を支援するコンサルティング会社です。代表1人の会社ですが、自社では業務AIの仕組みを50種類運用しています。最初から多かったわけではなく、一つの業務を自動化しては次へと広げてきた結果です。特別なツールを買い揃えたからではなく、どの業務をどう任せるかを設計してきた積み重ねです。規模や予算が限られていても、小さく始めれば設計しだいで動かせる——それが、いまの生成AIです。

4. 生成AI活用の差は「ツール」ではなく「設計」で決まります

生成AI活用の成果は、導入したツールの数ではなく、目的・業務の絞り込み・計測という設計の質で決まります。

成果につながらない使い方には、共通のパターンがあります。全社員にアカウントを配り、「自由に使ってみて」で終わるケースです。これでは調べ物と文章補助にとどまりがちで、「たまに利用する」53.9%の側に落ち着いてしまいます。

逆に、成果を出す会社の進め方は、次の3ステップに集約できます。

  • 目的を一文で書く:「残業を減らす」ではなく「見積書作成の時間を半分にする」のように、業務名と数字で書ける粒度まで絞ります。AI導入でKPI(成果を測る指標)を設定している日本企業は30%で、米国・ドイツの80%と開きがあります。ここが最初の分かれ目です。書き方の詳細は中小企業のAI・DX導入|成否を分けるポイントで解説しています。
  • 1業務に絞って深く入れる:あれもこれもではなく、時間を取られている定型業務を1つ選んで集中します。深く入れるほど、業務を任せられる2.4%の側に近づきます。
  • 測って、横に広げる:着手前に「何分かかっていたか」を記録し、効果を数字で確認します。生成AI導入企業で働く人は業務時間を平均16%、1日あたり75分削減しています(マクロミル調査、2026年4月)。数字が見えれば、次の業務への展開も社内の合意も速くなります。

PwCの調査では、日本企業の13%は効果をまだ評価していませんでした。裏を返せば、「測る」を実行するだけで、すでに一歩前に出られます。

3つのステップに共通するのは、どれも「ツールを買う」話ではないことです。設計は、紙とペンから始められます。

5. 伴走者を早めに入れる——AI導入パートナー選びの3条件

AI導入の伴走者は、ツール販売ではなく業務の設計から入り、自分でも生成AIを使い倒している相手を選ぶことが重要です。

設計の大切さは分かっても、自社だけで進めるのが難しい場面はあります。日常業務を回しながら、事例を集め、ツールを比べ、検証まで行う。「時間がない」という声が出るのは当然です。成功事例の情報不足を挙げる中小企業が83.3%という数字は、自力での情報収集の限界も示しています。

だからこそ、外部の伴走者を早めに入れる選択肢があります。ただし、相手選びを誤ると「高いシステムを入れたのに使われない」という二重の失敗になりかねません。見るべきポイントは3つです。

  • 業務の設計から入る相手か:最初からツールやシステムの話をする相手より、「どの業務に、いちばん時間がかかっているか」から聞いてくれる相手を選びます。
  • 自分で生成AIを使い倒しているか:自社で運用していない人の助言は、一般論になりがちです。「あなたの会社では何に使っていますか」と聞いてみてください。具体的な答えが返ってくるかどうかで分かります。
  • 小さく始めて測る提案をするか:最初から大規模な開発を勧める相手には注意が必要です。1業務・1カ月の試行から入る提案のほうが、結果として早く、安くつきます。

費用の面も、最初から大きく構える必要はありません。AIツールの導入には「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)のような公的支援を使える場合があります。何が対象になるかは年度や用途で変わり、申請には国に登録された支援事業者と組む必要もあります。補助金の活用まで一緒に確認できる伴走者がいると、心強いはずです。

早く動く理由は、個人にも組織にも当てはまります。生成AIをほぼ毎日使う層は月平均10,372円を自己学習に投資し、市場価値が上がった実感は低頻度の利用者の約2倍でした(マクロミル調査、2026年4月)。個人でこれだけ差がつくということは、組織でも同様のことが起こり得ます。使うほど知識と経験が積み上がる以上、この差は待っているあいだにも開いていくと考えられます。

6. 今日からできる生成AI活用の3ステップ

生成AI活用の第一歩は、新しいツールの購入ではなく、自社業務の棚卸しから始まります。費用はかかりません。

完璧な計画は要りません。優先順位の高い順に、次の3つから始めてみてください。

  • 社内の利用状況を聞く(所要15分):次の会議で「誰が・どの業務に・どれくらい生成AIを使っているか」を聞いてみてください。利用率88.8%の時代です。すでに使っている社員が、最初の協力者になります。
  • 業務を1つ選ぶ(所要30分):時間を多く取られている定型業務を1つだけ選びます。見積書、議事録、日報、問い合わせ対応——毎週発生し、手順に型がある業務ほど向いています。
  • 1カ月試して、測る:選んだ業務が「何分かかっていたか」「生成AIを使うと何分になったか」を記録します。効果が出れば横展開、出なければその時点で専門家に相談する。どちらに転んでも判断材料が手に入ります。

ここまでやると、「方針を決めていない」38.7%から一歩抜け出した状態になります。小さく始めて、数字で判断する。それで十分です。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 生成AIを導入したのに効果が出ないのはなぜですか?

多くの場合、「広く浅く」の使い方で止まっているためです。調査では利用率88.8%に対し、AIエージェントで業務を自動化できている人は2.4%にとどまります(KiteRa調査、2026年5月)。目的を一文で定め、1業務に絞って深く使うことで、成果の出方が変わります。

Q2. 中小企業でも生成AIで成果は出ますか?

出ます。組織的活用は大企業59.1%に対し中小企業32.3%と差はありますが(東京商工リサーチ調査、2026年4月)、裏を返せば中小企業の3社に2社はこれからです。大企業でも「期待を大きく上回る効果」は9%にとどまっており(PwC調査、2026年6月公表)、使いこなしの面では多くの企業がまだ手探りの段階にあります。

Q3. 生成AIの社内活用は、何から始めればいいですか?

業務の棚卸しからです。時間を多く取られている定型業務を1つ選び、1カ月間、生成AIでの短縮を試してください。生成AI導入企業で働く人は、業務時間を平均16%、1日あたり75分削減しています(マクロミル調査、2026年4月)。まず1業務で数字を作るのが近道です。

Q4. 外部の専門家に相談するのは、いつがよいですか?

「自社の業務のどこに使えるかイメージが湧かない」と感じた時点が目安です。中小企業の83.3%が成功事例の情報不足を困りごとに挙げています(中小企業基盤整備機構調査、2026年3月公表)。情報収集だけで数カ月を使うより、事例を持つ伴走者に聞くほうが近道になりやすいはずです。

7. 「まだ誰も分かっていない今」は、追い抜きやすい時期です

いまは、生成AIに業務を任せられている人が2.4%にとどまり、ほとんどの企業が使いこなしを手探りしている段階です。使う人は9割に近づいた一方、大企業でも期待を大きく上回る効果を出せたのは9%でした。

手探りの時期は、先に動いた会社ほど経験を積みやすい時期でもあります。組織的活用が3割台の中小企業にとって、この数字は「まだ間に合う」ことを示しています。正しい設計で早く着手すれば、業界の中で先行できる余地があります。

Marumakeでは、生成AI導入とマーケティングの無料相談を受け付けています。「何から始めればいいか、まだ分からない」という段階こそ、相談のしどきです。

あなたの会社の「最初の1業務」を、一緒に見つけるところからお手伝いします。

この記事を書いた人

青木一剛(あおき・いっこう)。外資系IT企業で広告プロダクトのマーケティングを担当し、アカウントストラテジスト時代を含め300社超のマーケティングを支援。Marumake代表として中小企業のAI導入とマーケティングを伴走支援するほか、デジタル庁デジタル推進委員、総務省地域情報化アドバイザーを務める。自社では業務AIの仕組みを50種類運用中。

免責事項

本記事の見解は個人の見解であり、所属・顧問先機関を代表するものではありません。各調査の数値は発表時点のものであり、最新の状況は出典元の公式情報をご確認ください。「デジタル化・AI導入補助金」の補助対象・要件は年度により変わるため、申請時は公式サイトで最新情報をご確認ください。

参考文献

#出典・数値発表元年月
1SaaSを日常利用する管理部門・専門部門の20〜59歳1,087名。利用率88.8%・AIエージェント自動化2.4%・「たまに使う」53.9%/「常に使う」35.7%KiteRa「AI(生成AI/AIエージェント)の利用実態に関する調査」(PR TIMES)2026.05
2生成AIを導入・活用している企業に勤務する20〜59歳3,090名。業務時間平均16%・1日75分削減、ヘビーユーザーの自己投資月平均10,372円、市場価値向上実感は低頻度層の約2倍マクロミル「生成AIの活用実態調査」(PR TIMES)2026.04
3売上高500億円以上の企業の課長職以上、6カ国計3,044名(日本932名)。日本の活用・推進度87%、「期待を大きく上回る効果」9%で6カ国最下位(米38%・英32%)、効果未評価13%PwC Japan「生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較」2026.06
4国内企業6,327社。組織的に生成AI活用を進める企業は大企業59.1%・中小企業32.3%(約27ポイント差)、中小企業の38.7%が「方針未定」東京商工リサーチ「生成AIに関する企業向けアンケート調査(第3回)」2026.04
5全国の中小企業(有効回答1,647社)。「成功事例などの情報が不足」83.3%・「ベンダー/製品選定の情報が不足」79.8%、製造・生産部門のAI導入率34.9%中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(PDF)2026.03
6AIを含むITツール導入を支援する中小企業向けの公的支援制度(旧IT導入補助金)。補助対象・要件は年度により変動中小企業庁・中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026」2026

※業界データ(建設業のICT化87%・顧客接点の生成AI活用9.4%)および日本企業のKPI設定率30%(米独80%)の出典は、それぞれリンク先の既存記事内に記載しています。

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