1. 動画で情報を探す人が、想像以上に増えています
取引先やサービスを調べるとき、皆様はどのような手順を踏まれますか。ホームページを確認し、口コミを見て、そしてYouTubeで動画を探す。こうした行動パターンが、年齢を問わず広がりつつあるようです。
YouTube Brandcast 2024(Think with Google Japan発表)によると、YouTubeの国内月間利用者数は7,370万人を超えています(18歳以上、2024年5月時点)。
さらに注目したいのは、年代別の利用状況です。総務省情報通信政策研究所の「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、動画共有サービスの利用率は40代で91.8%、50代で83.0%、60代でも71.2%に達しています。
動画による情報収集は、若年層だけの行動ではなくなりつつあります。この傾向は、経営層やビジネスの意思決定者にも及んでいると考えられます。
2. 中小企業の情報発信に「動画」が加わりにくい3つの背景
Marumake(マルマケ)は、AI技術と戦略設計を組み合わせたマーケティングコンサルティングを提供する企業です。日頃のご相談の中で、動画活用について以下のような声をよくお聞きします。
- ・「動画制作には専門的な機材と技術が必要で、外注すると1本あたり数百万円かかると聞いた」
- ・「BtoB企業や地域密着の事業では、動画にしても見てもらえる層が限られるのではないか」
- ・「SNSの運用だけでも手一杯で、動画にまで手が回らない」
こうした懸念は、多くの中小企業に共通するものだと感じています。しかし最近、意外な領域で動画活用が進んでいる事例が目に留まりました。それが、地方自治体によるYouTubeチャンネルの運営です。
3. 長崎県「酒マニア」— アドバイザーとして間近で見た、自治体の動画発信
私たちが特に注目している事例が、長崎県の公式YouTubeチャンネル「巡ろう、長崎の至福の一杯。酒マニア」です。Marumake代表はこのプロジェクトにアドバイザーとして関わっており、行政が動画発信に取り組む現場を間近で見てきました。
この番組は、長崎県が推進する「マニアが集う長崎プロジェクト」事業の一環として2024年に始まりました。「アニメ・小説」と「酒」を先行テーマとし、国内外の"マニア"層を長崎に呼び込むことを目指す取り組みです。
番組の構成は、YouTuberやインフルエンサーが長崎県内の酒蔵を実際に訪ね、酒造りの工程や造り手の想いを取材するというものです。五島列島のツバキを使ったクラフトジン「GOTOJIN」を手がける五島つばき蒸溜所、壱岐の本格焼酎で知られる玄海酒造、平戸で日本酒を醸す森酒造場など、2024年度は県内の個性豊かな蔵元を取材しました。酒蔵だけでなく、取材したお酒を実際に提供している地元の飲食店も紹介しており、「蔵を知り、街で味わう」という体験の導線が設計されています。
アドバイザーの立場から見て印象的だったのは、行政の広報誌やホームページでは伝えきれない「現場の空気感」が、動画によって届いているという点です。蔵の中の湿度や光、杜氏の表情、お酒が注がれる音。こうした要素はテキストや写真では再現が難しく、動画ならではの情報伝達力を感じました。
数字の面でも、手応えが出ています。長崎新聞の報道によると、チャンネル開設から約半年で視聴回数は15万回(広告表示を除く)に達し、当初の目標であった11万6,500回を上回りました。チャンネル登録者数も配信開始から約3ヶ月で1,390人に到達しています。
2025年度は紹介する酒蔵を12蔵に拡充することが発表されており、長崎県がこの取り組みを継続・拡大していく姿勢がうかがえます。
行政がここまで本腰を入れて動画発信に取り組んでいるという事実は、動画というメディアの持つ可能性を示す一つの材料だと考えています。
4. 他の自治体にも広がる動画発信の取り組み
長崎県の事例は特別なものではありません。LaboTubeの記事によると、多くの自治体がすでにYouTubeチャンネルを開設し、情報発信に活用しています。いくつかの事例をご紹介します。
茨城県の「いばキラTV」は、ローカル民放テレビ局を持たない同県が、YouTubeを広報の柱のひとつに据えた事例として知られています。県民からのコンテンツ公募も受け付けており、地域全体を巻き込んだ発信の形を模索しています。
宮崎県小林市は、2015年に公開したPR動画「ンダモシタン小林」で注目を集めました。地元の方言である西諸弁をフランス語のように聞かせるという構成で、公開当時に大きな話題となった動画です。
農林水産省の「BUZZ MAFF」は、省庁の公式プロジェクトでありながら、職員個人がそれぞれの発信スタイルで農林水産業の現場を紹介するという取り組みです。組織的な広報とは異なるアプローチとして注目されています。
これらの事例に共通しているのは、動画によって「文章だけでは伝わりにくい情報」を届けようとしている点です。行政という慎重な組織が、動画発信に取り組む価値があると判断していること自体が、ひとつの示唆になるのではないでしょうか。
5. 自治体の取り組みから見えてきた、動画発信の「向き不向き」
これらの事例を観察する中で、動画による情報発信には向いている場面とそうでない場面があることも見えてきました。
動画が力を発揮しやすいのは、「空気感」や「プロセス」を伝えたい場面です。酒マニアの事例でいえば、酒蔵の雰囲気や造り手の人柄は、動画だからこそ伝わる情報でした。製造工程、職人の手仕事、地域の風景など、「見てもらうことで価値が伝わる」コンテンツとの相性は良いと感じています。
一方で、すべての情報発信に動画が最適というわけではありません。業種やターゲット層、伝えたい内容によって最適な手段は異なります。また、動画制作には企画・撮影・編集の工数がかかるため、社内リソースとの兼ね合いも現実的に考える必要があります。
Marumakeは、「高品質なものを、短期間で、適正価値で」を基本姿勢としています。動画活用を検討する際にも、自社の状況に合った手段を慎重に選ぶことが大切だと考えています。
6. 動画による情報発信を考える際の、率直な注意点
動画活用を検討される際に、あえて注意点もお伝えしておきたいと思います。
1点目は、継続にはそれなりの工数がかかるということです。1本の動画を企画・撮影・編集・公開するまでに必要な時間は、内容や品質によって大きく異なります。始める前に、社内でどの程度のリソースを割けるかを見積もることをお勧めします。
2点目は、成果が見えるまでに時間がかかる場合が多いということです。動画を数本公開しただけで集客や認知度向上につながるケースは稀です。酒マニアの事例でも、15万回の視聴に到達するまでに約半年の継続がありました。
3点目は、動画プラットフォームの仕様や表示の仕組みは常に変化しているということです。特定の手法に依存するのではなく、発信する内容そのものの質を重視する姿勢が長期的には大切だと考えています。
よくある質問
Q. 中小企業がYouTubeで動画を公開するのに費用はかかりますか?
A. YouTubeへの動画投稿自体は無料です。撮影にはスマートフォンでも対応可能で、三脚(約2,000円程度)や外付けマイク(約3,000円程度)を加えると品質の向上が見込めます。ただし、企画・撮影・編集にかかる人件費は別途必要になるため、社内リソースとの兼ね合いを含めて検討されることをお勧めします。
Q. 顔出しが苦手でもYouTubeは活用できますか?
A. 顔出しをしない動画のフォーマットは複数あります。製品の使い方を手元だけで撮影する動画、テロップとナレーションで構成する解説動画、作業工程をタイムラプスで記録する動画などが一般的です。自社の事業内容に合ったフォーマットを選ぶことが重要です。
Q. どのような業種が動画による情報発信に向いていますか?
A. 一概には言えませんが、製造工程や技術力を「見せる」ことで価値が伝わる業種(製造業、建設業、飲食業、農業など)は相性が良いとされています。一方で、あらゆる業種に動画が最適というわけではありません。自社の顧客がどのような手段で情報を収集しているかを把握したうえで判断されることをお勧めします。
7. 情報発信についてお考えのことがあれば
「動画を活用すべきかどうか、判断がつかない」「自社の強みをどう発信すればいいかを整理したい」。そうしたお声があれば、お気軽にお聞かせください。
動画に限らず、情報発信全般のご相談をお受けしています。以下の情報をお聞かせいただければ、より具体的なお話ができます。
- ・御社の事業内容とターゲット顧客
- ・現在の情報発信の状況と課題
- ・関心をお持ちの手段やイメージ(あれば)
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分かる範囲で結構です。まずは無料でお話を伺います。
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