1. 自治体のYouTube活用が全国で加速 — 動画広報の現状
自治体がYouTubeを活用する場合の費用相場は、内製なら5,000円〜、外注なら1本30万〜200万円程度です。本記事では、全国800超の自治体チャンネルの調査データをもとに、費用・KPI設定・成功事例を予算規模別にまとめています。稟議書や企画書にそのまま転用できるデータを収録しました。
全国800以上の自治体がYouTubeチャンネルを開設し、動画広報は行政の標準的な選択肢になりつつあります。2026年現在、都道府県から市区町村まで多くの自治体が公式YouTubeチャンネルを開設しています。自治体チャンネルの集計データベースでは800以上の自治体チャンネルが確認されており、動画での情報発信はもはや一部の先進自治体だけの取り組みではなくなっています。
背景にあるのは、従来の広報手段の限界です。日本広報協会とネオマーケティングの共同調査(2026年)によると、20代の45.0%が自治体広報紙を「読んだことがない」と回答しています。若年層に届かない広報紙だけでは、住民との接点を維持するのが難しくなっています。
一方で、YouTube Brandcast 2024(Think with Google Japan発表)によると、YouTubeの国内月間利用者数は7,370万人(18歳以上、2024年5月時点)に達しています。
総務省情報通信政策研究所の「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、40代の動画利用率は91.8%、50代で83.0%、60代でも71.2%に達しています。
動画による情報収集はもはや若年層だけの行動ではなく、経営層や行政の意思決定者にも浸透しています。この流れを受けて、総務省の「自治体DX推進計画 第4.0版」(2025年3月)でも「住民との接点(フロント)改革」が重点領域に位置付けられました。
2. 自治体が動画広報に踏み出す3つの背景 — 広報紙の限界とDX推進
自治体がYouTube運用に踏み出す背景には、広報紙の限界・国の政策的後押し・成功事例の連鎖という3つの構造変化があります。
Marumake(マルマケ)は、AI技術と戦略設計を組み合わせたマーケティングコンサルティングを提供する企業です。自治体の動画プロジェクトにアドバイザーとして関わる中で見えてきた、動画活用が広がる理由をお伝えします。
- ・広報紙の限界とデジタル広報への移行 — 印刷・配布に年間数百万〜数千万円規模のコストをかけながら、若年層に届いていない。総務省の配布方法事例集では、奈良市が配布見直しで年間約2,700万円を削減した事例も報告されている。動画は配信コストが低く、リーチの幅が広い
- ・国の政策による後押し — 総務省の自治体DX推進計画やデジタル庁の「デジタル社会重点計画」が、デジタル広報への投資を後押し。デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例も出始めている
- ・成功事例の連鎖 — 先行自治体の成果が可視化されたことで、「うちの自治体でもやれるかもしれない」という判断が生まれやすくなった
こうした構造変化は、動画活用を「先進的な取り組み」から「広報手段の標準的な選択肢」へと変えつつあります。
3. 自治体YouTube活用の成功事例:長崎県「酒マニア」の動画制作現場
長崎県「酒マニア」は、自治体YouTube活用の成功事例として50万回超の再生と実際の観光行動を生み出しています。
具体的に見ていきましょう。長崎県の公式チャンネル「巡ろう、長崎の至福の一杯。酒マニア」があります。Marumake代表はこのプロジェクトに構想段階から関わっています。仕様書の作成や予算設計の段階からアドバイスを行い、その提案が実際の番組設計に反映されています。撮影にも一部同行しており、行政が動画発信に取り組む現場を間近で見てきました。
この番組は、長崎県が推進する「マニアが集う長崎プロジェクト」事業の一環として2024年に始まりました。「アニメ・小説」と「酒」を先行テーマとし、国内外の"マニア"層を長崎に呼び込むことを目指す取り組みです。
番組の構成は、YouTuberやインフルエンサーが長崎県内の酒蔵を実際に訪ね、酒造りの工程や造り手の想いを取材するというものです。五島列島のツバキを使ったクラフトジン「GOTOJIN」を手がける五島つばき蒸溜所、壱岐の本格焼酎で知られる玄海酒造、平戸で日本酒を醸す森酒造場など、県内の個性豊かな蔵元を取材しています。

酒蔵だけでなく、取材したお酒を実際に提供している地元の飲食店も紹介しており、「蔵を知り、街で味わう」という体験の導線が設計されています。

アドバイザーの立場から見て印象的だったのは、行政の広報誌やホームページでは伝えきれない「現場の空気感」が、動画によって届いているという点です。蔵の中の湿度や光、杜氏の表情、お酒が注がれる音。こうした要素はテキストや写真では再現が難しく、動画ならではの情報伝達力を感じました。


数字の面でも、確かな手応えが出ています。チャンネルの総再生回数は50万回を超え(2026年4月時点)、登録者数も2,000人を突破しました。当初の半年目標であった11万6,500回再生を大きく上回る成果です。
さらに、YouTubeと連動するInstagramアカウントもフォロワー1,000人を超えており、動画とSNSの複合的な発信が効果を高めています。注目すべきは、「YouTubeを見て酒蔵を訪問しました」という声が実際に県庁に届いている点です。動画が視聴にとどまらず、観光行動という実際の成果につながっています。
行政がここまで本腰を入れて動画発信に取り組み、実際に観光行動という成果につながっているという事実は、動画というメディアの持つ可能性を示す一つの材料です。
4. 自治体のYouTube活用事例4選 — PR動画の成功パターン
全国の自治体YouTube活用事例を見ると、PR動画の成功には「企画力」と「地域の独自性」への投資が共通しています。
長崎県の事例は特別なものではありません。LaboTubeの記事によると、多くの自治体がすでにYouTubeチャンネルを開設し、地域PRや観光促進に動画を活用しています。
茨城県の「いばキラTV」は、ローカル民放テレビ局を持たない同県が、YouTubeを広報の柱のひとつに据えた事例として知られています。県民からのコンテンツ公募も受け付けており、職員の顔出しなしでも多彩な発信が可能であることを示しています。
宮崎県小林市は、2015年に公開したPR動画「ンダモシタン小林」で注目を集めました。シティプロモーション研究会の記事によると、再生回数は約290万回に達しています。VIDEO SALONの取材記事によると、4本の動画制作費は800万円(1本あたり約200万円)で、媒体露出効果は数億円規模と推計されています。自治体のPR動画において、企画力が費用対効果を大きく左右する好例です。
農林水産省の「BUZZ MAFF」は、省庁の公式プロジェクトでありながら、職員個人がそれぞれの発信スタイルで農林水産業の現場を紹介するという取り組みです。組織的な広報とは異なるアプローチとして注目されています。
こうした事例には共通するポイントがあります。それは「企画」と「地域の独自性」に投資していることです。高額な機材や凝った演出ではなく、その地域でしか撮れないコンテンツを、明確なターゲットに向けて届けている。この原則は、民間企業やスポーツ施設の情報発信にも通じるものがあります。実際に、長崎スタジアムシティのようなスポーツ施設と自治体が連携した地域活性化の動きも、動画広報との相性が高い領域です。
5. 自治体の動画制作費用の相場と、予算を通すためのロジック
自治体の動画制作費用は、内製なら数千円、外注なら1本30万〜200万円が2026年現在の相場です。
自治体の動画活用で最も多く聞かれる質問が「費用はどのくらいかかるのか」です。2026年現在の費用相場をまとめます。
動画制作の費用相場(1本あたり・2026年 Marumake調べ)
- ・内製(職員が制作):数千円〜30万円。スマートフォン+三脚+外付けマイクで開始可能
- ・フリーランスに外注:1万〜30万円。企画・撮影・編集を一括で依頼
- ・動画制作会社に外注:30万〜200万円。尺別の目安は1分で50万〜100万円
- ・チャンネル運用代行:月額10万〜50万円。戦略策定・制作・分析まで含む場合
庁内で予算を通す際に有効なのは、既存の広報コストとの比較です。総務省の広報紙事例集によると、奈良市が広報紙の配布見直しで年間約2,700万円を削減した事例が報告されており、広報紙の印刷・配布には年間数百万〜数千万円規模の費用がかかっています。YouTube動画の制作費を年間12本×50万円と仮定しても600万円。広報紙の補完手段として位置づければ、費用対効果の議論を組み立てやすくなります。
また、宮崎県小林市の「ンダモシタン小林」のように、4本800万円(1本約200万円)の制作費で約290万回再生・媒体露出効果数億円規模に達した事例は、予算承認の説得材料として効果的です。「失敗したらどうするか」への回答も同時に用意しておくことをお勧めします。小規模な内製動画から始め、成果が見えてから予算を拡大するステップアップ方式であれば、リスクを最小限に抑えられます。
6. 自治体YouTube活用のKPI設定と効果測定 — 庁内を説得する数字の作り方
自治体YouTube運用のKPIは、視聴回数・視聴維持率・登録者数・外部流入数の4指標が基本です。
効果測定とKPI設定は予算の継続確保に不可欠です。「やって終わり」ではなく、数字で成果を示せる体制を最初から設計しておくことが重要です。
基本のKPI 4指標
- ・視聴回数 — 認知拡大の基本指標。長崎県「酒マニア」は総再生50万回超を達成
- ・視聴維持率 — コンテンツの質を測る指標。40%以上が目安とされ、50%を超えると優秀
- ・チャンネル登録者数 — 継続的なリーチの指標。「酒マニア」は登録者2,000人超に成長
- ・外部流入数 — 観光サイトや問い合わせページへの送客効果。最終的なKGI(成果指標)との接続に使用
このように指標は多岐にわたりますが、普段デジタルマーケティングに馴染みのない方にとって、分かりにくいのは当然のことです。大切なのは、闇雲に全ての指標を追いかけるのではなく、プロジェクトの目的・目標・前後背景を踏まえた上で、適切な指標に濃淡をつけて設計することです。
KPI設計は一概に「これが正解」とは言えません。観光誘客を狙うのか、移住促進なのか、地場産業のブランディングなのか。目的によって重視すべき指標は変わりますし、庁内の政治的な背景や予算サイクルとの兼ね合いも考慮が必要です。一つひとつのプロジェクトに合わせてオーダーメイドで設計していく必要があります。
KPI設計は途中からでも見直せますが、早い段階で方向性を固めておくほど、その後の運用がスムーズになります。「何を成果とするか」の定義は組織ごとに異なるため、迷ったら早めに専門家へ相談されることをお勧めします。
また、成果が見えるまでには時間がかかることも事前に伝えておくべきです。酒マニアの事例でも、50万回超の視聴に到達するまでに約1年半の継続がありました。KPIは「3ヶ月」「6ヶ月」「1年」のマイルストーンを設定し、段階的に成果を報告する形が現実的です。
よくある質問
Q. 自治体がYouTubeチャンネルを開設・運用するのにいくらかかりますか?
YouTube自体の利用は無料です。内製の場合、スマートフォン+三脚(約2,000円)+外付けマイク(約3,000円)で始められます。動画制作を外注する場合の費用相場は、1本あたり30万〜200万円(制作会社の場合)。チャンネル運用を含むコンサルティングは月額10万〜50万円が中心価格帯です。なお、Marumakeでは予算が限られている自治体向けに、効率的な制作フローや、独自のネットワークを活かした撮影・キャスティングの手配実績もあります。上記の相場に当てはまらない予算規模でも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。
Q. 行政機関がYouTubeで広報するメリットは何ですか?
最大のメリットは、広報紙やホームページでは届きにくい層にリーチできることです。日本広報協会とネオマーケティングの共同調査(2026年)によると、20代の45.0%が自治体広報紙を「読んだことがない」と回答しています。一方で40代の動画利用率は91.8%に達しており、YouTubeは幅広い年齢層に情報を届けられる手段です。観光PR・移住促進・地場産業のブランディングに効果を発揮しやすい傾向があります。
Q. 自治体のYouTube活用でどんなKPIを設定すればいいですか?
基本のKPIは、視聴回数(認知拡大)、視聴維持率(コンテンツの質、40%以上が目安)、チャンネル登録者数(継続リーチ)、外部流入数(送客効果)の4指標です。予算承認を得るには、広報紙の印刷・配布コスト(年間数百万〜数千万円規模)との比較で費用対効果を示すのが有効です。ただし、プロジェクトごとに重視すべき指標は全く異なります。デジタル施策に不慣れな場合、運用途中で方針を見直すことになるケースもあります。早い段階で方向性を固めておくと、その後の調整がスムーズです。
Q. 自治体の動画制作を外注する場合の費用相場はいくらですか?
フリーランスへの依頼で1万〜30万円、動画制作会社で30万〜200万円、広告代理店経由で200万〜1,000万円が2026年現在の相場です。尺別では1分で50万〜100万円が目安です。宮崎県小林市の「ンダモシタン小林」は4本800万円(1本約200万円)で制作され、約290万回再生・媒体露出効果は数億円規模と推計されています。適切な企画と制作パートナー選びが、費用対効果を大きく左右します。
Q. 顔出しが苦手でも自治体のYouTubeは運用できますか?
運用できます。ドローンによる空撮映像、テロップとナレーションによる解説動画、作業工程のタイムラプス、地域の風景をBGM付きで紹介する動画など、顔出し不要のフォーマットは多数あります。茨城県「いばキラTV」は県民からの映像公募も受け付けており、職員の顔出しなしでも多彩なコンテンツを展開しています。
7. 自治体のYouTube活用、戦略設計からご一緒できます
「動画を活用すべきかどうか、判断がつかない」「予算申請に使えるデータが欲しい」「庁内を説得するためのKPI設計を手伝ってほしい」。そうしたお声があれば、お気軽にお聞かせください。
Marumakeは動画制作会社ではありません。動画に限らず、自治体や企業の情報発信戦略全体の設計をお手伝いしています。長崎県「酒マニア」プロジェクトのアドバイザー経験をはじめ、人口5万〜100万人規模の自治体・公的機関の広報戦略を支援してきました。行政の意思決定プロセスに即した提案が可能です。
以下の情報をお聞かせいただければ、より具体的なお話ができます。
- ・自治体名(都道府県・市区町村)と担当部署
- ・現在の広報手段と課題(広報紙・ホームページ・SNS等)
- ・動画で届けたい内容やターゲット(あれば)
- ・ご予算感(分かる範囲で結構です)
分かる範囲で結構です。まずは無料でお話を伺います(オンライン30分程度)。
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