2026.04.13Business

「サッカーの試合は年50日だけ」
ジャパネットが1,000億円で証明した
スタジアムを街に変えるスポーツビジネスの新モデル
長崎スタジアムシティの収益モデルを徹底分析。非試合日収益の5つの設計原則と、あなたのクラブでも応用できるポイント

1. 長崎スタジアムシティへようこそ — スポーツビジネスの未来がここにあります

長崎県のデジタルコーディネーター、そして観光審議委員を務める立場から、スポーツとまちの関係を考える皆さんに、ぜひ一度訪れていただきたい場所があります。

長崎スタジアムシティ。通販大手ジャパネットグループが約1,000億円を投じ、2024年10月にオープンした複合施設です(長崎スタジアムシティ公式)。

長崎スタジアムシティ併設ホテルの部屋から見たPEACE STADIUM
宿泊したホテルの部屋から見たPEACE STADIUM。朝起きてカーテンを開けたらこの景色(筆者撮影)

今回、実際にスタジアムシティを訪れ、ジャパネット本社にもお伺いしてきました。ピッチとの距離わずか5メートルの臨場感。平日にもかかわらず家族連れで賑わうフードコート。そしてスタジアム併設のブルワリーで飲む出来立てのクラフトビール。

THE STADIUM BREWS NAGASAKI のクラフトビール
試合のない日に飲んだTHE STADIUM BREWS NAGASAKIのクラフトビール。柑橘系でとてもおいしい(筆者撮影)

数字だけでは伝わらない「空気」がそこにはありました。

この記事は単なる施設紹介ではありません。スポーツクラブの経営者やフロントスタッフ、スタジアムビジネスに関わる方々に向けて、長崎スタジアムシティのビジネスモデルを分析し、「他のクラブでも応用できるポイント」を整理してみました。

開業1年で累計来場者485万人(日本経済新聞、2025年)。V・ファーレン長崎の観客動員はJ2トップクラスへ急伸し、2026年にはJ1の舞台へ。この成果の裏にある「設計思想」には、規模を問わずどのクラブにもヒントになる要素が詰まっています。

2. 経営危機のクラブを買い、J1に導き、スタジアムを建てた — V・ファーレン長崎の「逆転劇」

V・ファーレン長崎の物語は、日本のスポーツクラブ経営における最もドラマチックな再建事例の一つです。

2016年シーズン末、V・ファーレン長崎はJ2・15位に低迷し、累積損失は3億円超。クラブ存続すら危ぶまれていました(日経ビジネス)。

2017年、ジャパネットホールディングスが経営権を取得。創業者・髙田明氏が社長に就任します(東洋経済オンライン)。「地元クラブを無くしてはいけない」— 通販の巨人が地方クラブの経営に乗り出した瞬間でした(ANA翼の王国)。

就任わずか7ヶ月で2017年11月にJ1昇格。ここからの展開が、スポーツビジネスの教科書を書き換えるレベルです。

クラブ経営の再建と並行して、髙田旭人社長(2代目)は三菱重工幸町工場の閉鎖(2017年度末)で生まれたJR長崎駅前の約7ヘクタールの更地に目をつけます。1943年から操業し、原爆の被害も受けた歴史ある工場跡地です(三菱重工プレスリリース、2018年)。

「ここに作らなかったら2度とできない」(ANA翼の王国)。

2018年に優先交渉権を獲得し、総事業費約1,000億円のプロジェクトが始動。事業主はジャパネットホールディングスで、「民間企業として覚悟を持って進めていく」と宣言した完全民間主導のプロジェクトです(長崎スタジアムシティ公式)。

この経営判断の裏にある思想が、スポーツビジネス関係者にとって最も重要なポイントです。

髙田旭人社長は明確に語っています。「きちんと黒字にして成り立つことを証明し、日本中の経営者が真似できる地域創生モデルを作りたい」(ANA翼の王国)。

ボランティアでも、CSRでもない。「スポーツクラブの経営を、スタジアムごと事業として成立させる」という宣言です。民間企業であればリスクを取って自由に設計・運用できると髙田社長自身が語っていますが(日経クロストレンド)、その意思決定の速さと規模は、日本のスポーツ界に前例がありません。

3. 「試合日は年50日しかない」— 日本一の非試合日収益モデルを解剖する

長崎スタジアムシティの真の革新は、「スタジアム」ではなく「街」を設計したことにあります。

Jリーグのホームゲームは年間約20試合。カップ戦を加えても年50日程度。つまり、年の86%はスタジアムが空いています。この「年50日問題」は世界中のスタジアム経営者が直面する共通課題です。

欧州のトップクラブはどう解決しているか。トッテナム・ホットスパー・スタジアム(ロンドン)は非サッカーイベントで年間£55m(約110億円、2023-24シーズン実績)を計上(The Stadium Business、2024年)。レアル・マドリードのサンティアゴ・ベルナベウは改修後に試合日収益が103%増の2.48億ユーロに急伸しています(Deloitte Football Money League 2025)。Deloitte Football Money League 2025でも非試合日イベントの拡大が商業収益を押し上げていると指摘されています(Deloitte)。

しかし、トッテナムもベルナベウも、既存スタジアムの「改修」で段階的に非試合日収益を拡大してきました。長崎スタジアムシティは、開業時点で5つの収益軸を一括実装した点で、国内はもちろん海外と比較しても先進的な事例といえます。

収益軸1: サッカー×バスケの「2競技同居」モデル

PEACE STADIUM(約20,000席)にV・ファーレン長崎、HAPPINESS ARENA(約6,000席)に長崎ヴェルカ(Bリーグ=プロバスケットボールリーグ)。同一敷地内に2つのプロスポーツチームが本拠地を置くことで、年間の試合日が大幅に増えます。ヴェルカは移転後、チケット完売が続くなど高い集客力を発揮しており(長崎新聞、2025年)、実際に長崎県庁の方にお話を伺った際も「ヴェルカのチケットは人気でなかなか取れない」とおっしゃっていました。

スポーツクラブ経営の視点で言えば、これは施設の固定費を2チームで按分するという合理的な構造です。アリーナはコンサートや企業イベントにも転用でき、稼働率がさらに上がります。

この「複数競技の同居」は、新スタジアムを建てなくても応用できる発想です。たとえば既存アリーナの共同利用や、近隣の異競技クラブとの施設シェアリング。以前、あるスポーツクラブさんと「稼働率をどう上げるか」というテーマでお話しした際にも感じたのですが、意外と答えは「自分たちだけで埋めようとしない」ことだったりします。

収益軸2: VIPルーム×ホテル客室の「兼用設計」

スタジアムシティホテル長崎(243室)のVIPルームは、試合日にはスタジアムのVIPラウンジとして機能し、それ以外の日は通常のホテル客室になります(ITmedia Business、2025年)。

この「兼用設計」は、VIPルームが試合日にしか使えないという従来のスタジアムの非効率を解消しています。月の約3分の2はホテルとして稼働させ、資産の稼働率を極限まで高めています。

ホテルとの兼用は長崎の規模だからこそ実現した設計ですが、この「空間の多目的利用」という考え方自体は、VIPラウンジを企業イベントや貸し会議室として平日に開放するなど、既存施設でも展開できるアプローチです。

収益軸3: スタジアム併設ブルワリー(ジャパネットHD発表で国内初)

THE STADIUM BREWS NAGASAKIは、10基のタンクで年間約100種類のクラフトビールを醸造(ジャパネットHDプレスリリース)。

試合のない日も、スタジアムの観客席は一般開放されており、ビールを飲みながらピッチを眺められます(長崎旅ネット)。「スタジアムに行く理由」を試合以外にも作る。ファンエンゲージメントの観点から見れば、これは非試合日のブランドタッチポイントを創出する仕掛けです(関連:BtoB企業のブランディング実践ガイド)。

ブルワリーまでは難しくても、「試合がなくてもスタジアムに足を運ぶ理由」を作ることは、どのクラブでも取り組めます。スタジアムカフェ、朝ヨガ、キッズサッカー教室。規模は小さくても、「ここに来たい」と思わせる非試合日コンテンツは、ファンのライフスタイルにクラブを組み込む第一歩になります。

収益軸4: 商業施設で「日常接点」を構築

ながさき経済webの調査(開業半年時点)では、来場目的の最多は「買い物・飲食」(ショッピング58.6%、飲食53.4%)で、「サッカー観戦」は24.7%にとどまります(ながさき経済web)。

この数字が意味するのは、来場者の4人に3人はサッカーファン以外ということです。商業施設によって、スポーツに関心がない市民も日常的にスタジアムを訪れる構造ができています。「ライトファン以前」の層との接点を、商業施設が作っているのです。

この「スポーツファン以外を巻き込む」設計は、私たちがクラブのマーケティング戦略を考える際に、最も重視するポイントの一つです。商業施設を建てなくても、地元の飲食店や小売店とのコラボイベント、スタジアム周辺のマルシェ開催など、「ファン以外が来る理由」を仕掛けることはできます。

収益軸5: ウェディング・コンサートの「体験価値」

スタジアムビューでの挙式(メモリードと業務提携)や、アリーナでの音楽イベントなど、スポーツ以外の「特別な体験」の受け皿にもなっています。開業2年目は自主興行の音楽イベント強化を打ち出し、年間来場者目標を650万人に引き上げています(ITmedia Business)。

スタジアムでしかできない「非日常体験」の設計は、ウェディングや音楽に限りません。企業の周年パーティー、卒業式、地元高校のプロムナイト。「この場所でしかできない体験」を商品化する発想は、スタジアムの規模を問わず取り入れられます。

長崎モデルから抽出する「5つの再現可能な設計原則」

ここまで5つの収益軸を見てきましたが、1,000億円という投資規模に目を奪われる必要はありません。長崎が示した本質は、以下の5つの設計原則に集約できます。

  • 「試合日以外」を設計する — 年間365日のうち、試合のない315日をどう使うか。カフェ、イベント、開放型施設など、規模は自由です
  • 「ファン以外」を巻き込む — スポーツに関心がない人が足を運ぶ理由を作る。商業連携、子ども向けプログラム、地域のお祭りとの共催
  • 「空間の多目的利用」で稼働率を上げる — VIPルーム、ラウンジ、会議室。試合日にしか使えない空間を減らす
  • 「データで語れるクラブ」になる — ファンの属性・行動・消費を可視化し、スポンサーに提案できる状態を作る
  • 「体験」を商品化する — スタジアムでしかできない非日常を、ウェディング・企業イベント・観光コンテンツに展開する

どれも、既存のスタジアムやアリーナから始められるものばかりです。

4. 観客動員2倍、J1昇格 — 数字で見る「新スタジアム効果」の実態

新スタジアムへの移転は、V・ファーレン長崎のクラブ経営を根本から変えました。

ここからは、スポーツクラブ経営者が最も気にするであろうKPI(重要業績評価指標)に沿ってデータを整理します。

観客動員

旧スタジアム(トランスコスモススタジアム長崎)時代の2023年シーズン、V・ファーレン長崎の1試合平均観客数は約7,300人でした。新スタジアム移転後は約15,000人規模へ大幅に増加し、J2リーグでトップクラスの集客力を発揮しています(東洋経済オンライン、2025年)。

ピッチと観客席の距離は約5メートルで、ジャパネットHDが「全方向で国内最短」と発表しています(ジャパネットHDプレスリリース)。陸上トラック付きの旧スタジアムとは別次元の臨場感です。Jリーグが掲げる「フットボールスタジアムであること」という基準(Jリーグスタジアム基準)を、高い水準で満たしています。

クラブ収益

V・ファーレン長崎の売上高は約40億円規模に到達(東洋経済オンライン)。ジャパネット参入前の経営危機時代とは隔世の感があります。

競技成績

2025年シーズン、J1昇格を達成(日本経済新聞)。2026年からJ1で戦っています。新スタジアムの後押しが、選手のパフォーマンスにも影響している可能性があります。

施設全体の集客

開業1ヶ月で55万人、3ヶ月で140万人、1年で485万人(いずれも延べ来場者数)(日本経済新聞長崎新聞)。長崎市の人口が約38万人(長崎市公式統計)ですから、人口比で約12倍の来場があった計算です。

特筆すべきは平日でも1万人以上/日が訪れている点です(東洋経済オンライン)。試合のない日の定常集客こそ、スタジアムビジネスの真価を測る指標です。

私たちがスポーツクラブの経営分析をお手伝いする際、まず確認するのがこの「非試合日の来場者数」と「ファン1人あたりの年間接触回数」です。試合の勝ち負けに左右されない安定的な来場者基盤があるかどうかが、スポンサー営業力やグッズ売上に直結するからです。長崎のこの数字は、その理想形を示しています。

他のJリーグスタジアムとの比較

施設開業収容ピッチ距離事業費スキーム
パナスタ吹田201539,694141億円民間寄付→市所有→指定管理(吹田スタジアム公式
サンガスタジアム202021,600約154億円(公費)公設民営
エディオンPW広島2024/228,5208m約286億円公設民営
長崎SC2024/1020,000約5m約1,000億円民間企業主導

それぞれの手法にはそれぞれの合理性があります。吹田の寄付モデル、広島の都心立地、京都のコンパクト設計。しかし、スタジアムを核とした複合都市機能を丸ごと民間企業主導で建設・運営するというモデルは、長崎が日本で初めて実現したものです。

世界を見渡しても、LAのSoFi Stadium(約55億ドル、100%民間)など、100%民間のスタジアム開発は大都市・大規模クラブの事例が中心です。人口38万人の地方都市でこの規模は極めて珍しいケースといえます。

なお、スタジアム比較で重要なのは「どの手法が優れているか」ではなく、「自分のクラブに合った手法は何か」です。吹田のように地域の寄付で建てるモデルには地元の一体感がありますし、広島のようにPFIを活用すれば初期投資リスクを分散できます。投資規模ではなく、「スタジアムをどう使い倒すか」の設計思想の方が、クラブ経営への影響は大きいと私たちは考えています。

5. 通販のDNAがスタジアムを変える — テクノロジー×ファンエンゲージメント

長崎スタジアムシティは、ジャパネットが通販事業で培ったデータ活用のノウハウをスタジアム運営に注入した、日本におけるスマートスタジアムの先行事例として注目されています。

スポーツクラブ経営において、ファンの「試合以外の接点」をどうデジタルで設計するかは、収益多角化の鍵です。長崎はここに通販企業のDNAを持ち込みました。

公式アプリ:35万人が使うワンストップ・プラットフォーム

EY(アーンスト・アンド・ヤング)が2021年からICT PMO(情報通信技術のプロジェクトマネジメント)として参画。公式アプリは開業前の2024年8月時点で35万人が登録済みとなっています(EY Japan)。

ここで注目すべきは、アプリが「チケット販売ツール」ではなく「顧客データ基盤」として設計されている点です。購買履歴・来場頻度・飲食の好みなど、ジャパネットが通販で蓄積してきたCRM(顧客関係管理)のノウハウがそのまま活きています。

「アプリを作ったけど、チケット売り場の代わりにしかなっていない」— これは私たちがスポーツクラブのデジタル戦略を支援する中で、最もよく聞くお悩みの一つです。長崎が違うのは、アプリを「販売チャネル」ではなく「ファンを知るための窓口」として位置づけている点にあります。この発想の転換は、予算規模に関係なく、すべてのクラブが今日から取り組めるテーマです(関連:中小企業のショート動画マーケティング戦略)。

長崎スタジアムシティを上階から見下ろした眺め。ピッチと長崎の山並みが一望できる
上階から見下ろしたPEACE STADIUM。この施設全体がデータで動いている(筆者撮影)

スマートスタジアム・インフラ

通信パートナーが5G・Wi-Fi環境をスタジアム全域に整備(ソフトバンクニュース、2024年)。IoTセンサーでトイレの使用回数やごみの量をリアルタイムで可視化し、AIによる人流最適化を行う「Autonomous Stadium」構想が進んでいます(未来図 MIRAIT ONE、2024年)。

独自決済「スタPAY」とポイント「スタポ」

独自決済システムとポイントプログラムは、スタジアム内のすべての購買データを統合する仕組みです。どのファンがどの席で、何を食べ、何を買ったか。このデータの蓄積は、スポンサーへの提案資料としても大きな武器になります。「うちのスタジアムに来るファンの属性と消費行動はこうです」と、データで語れるクラブは強い。

独自決済を一から作るのはハードルが高いかもしれません。しかし、既存のキャッシュレス決済やPOSデータ、チケット購入履歴、SNSのエンゲージメントデータを統合するだけでも、「うちのファンはどんな人たちか」を可視化することは十分に可能です。AIを活用すれば、ファンのセグメント分析やスポンサー向けのレポーティングも効率的に自動化できます。私たちMarumakeが得意とする領域でもあります。体系的に整理したい方は、スポーツCRM成熟度モデル5段階で国際フレームワークに基づく自己診断と、Stage別の次の一手をまとめています。

世界のスマートスタジアム市場は2024年の約181億ドルから2030年には約396億ドルへ、年平均14.4%で成長すると予測されています(Grand View Research、2025年)。Deloitte TMT Predictions 2025でもスタジアムインフラへの官民投資加速とファン体験の向上を主要テーマの一つとして取り上げており(Deloitte)、長崎はこの国際トレンドにおける国内の先行事例として注目されています。

6. 開業1年の成果と、2年目に広がる可能性

開業1年で485万人を集めた長崎スタジアムシティ。この実績を起点に、2年目以降はさらに大きな可能性が広がっています。

EYが「先駆的モデル」と評価した地域創生の新形態

髙田旭人社長が掲げた地域創生の4象限 —「マイナスをなくす vs プラスを生む」×「お願いして来てもらう vs 自分から来たくなる」— のうち、「プラスを生み、自分から来たくなる」象限を民設民営で実現したことは、EYの記事でも「人口40万人の商圏でも大規模投資が成功すれば、他のどの都市でもうまくいく事例になる」と位置づけられています(EY Japan日経クロストレンド)。

年間経済波及効果は約963億円と試算されており(長崎新聞、2024年7月報道)、約1万3千人の雇用創出にもつながっています。スポーツ庁・経産省の「スタジアム・アリーナ改革指針」が掲げた「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」(経済産業省、2025年)の理想形を、民間が自力で実現した形です。

次の成長ステージ:市中心部との連携

髙田社長は「まだまだ市中心部には波及していない」と率直に語っています(長崎新聞、2025年4月報道)。これは「課題」というよりも、2年目以降の大きな伸びしろです。浜町繁華街や中華街との回遊が生まれれば、スタジアムシティの経済効果は現在の963億円からさらに拡大する余地があります。

スポーツクラブ経営の視点で言えば、「スタジアム経済圏」を超えて地域全体のLTV(顧客生涯価値)を設計するフェーズに入ったということです。アウェイサポーターを市内の飲食・観光に誘導するデジタルクーポン施策など、スポーツマーケティングの手法で解決できる領域が多く残されています。この「施設と街をつなぐ」設計は、まさにこれからの日本のスタジアムビジネスに共通するテーマになるでしょう。

宿泊型ファン体験の可能性

ホテル稼働率は着実に向上しており、6割程度の月が増えてきています(長崎新聞)。VIPルーム兼用設計という革新的なコンセプトに加え、「試合観戦+宿泊+翌日観光」のパッケージ商品や、アウェイサポーター向けの遠征プランなど、宿泊を組み合わせた体験設計の余地はまだまだ大きい。ファンの「1泊2日体験」を設計することは、客単価を飛躍的に引き上げる手法として、多くのクラブが検討できるテーマです。

J1という新しいステージ

2026年からJ1で戦うV・ファーレン長崎。J1のカードは川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、浦和レッズ、鹿島アントラーズといった強豪クラブがアウェイで長崎を訪れることを意味します。全国から集客できるカードが増えることは、スタジアムシティの観光集客にとって大きな追い風です。新スタジアムの熱狂的なホームの雰囲気は、J1の舞台でこそさらに真価を発揮するでしょう。

よくあるご質問

Q: 長崎スタジアムシティの建設費は税金ですか?

総事業費約1,000億円の事業主はジャパネットホールディングスで、民間企業主導のプロジェクトです(長崎スタジアムシティ公式)。この規模の民間主導スタジアム開発は、日本では極めて珍しい事例です。

Q: 試合がない日のスタジアムはどうなっていますか?

試合のない日もスタジアムの観客席は一般開放されており、併設ブルワリーでクラフトビールを飲みながらピッチを眺められます。商業施設にはスーパーや飲食店も入居しており、来場者の58.6%が「買い物」、53.4%が「飲食」を目的に訪れています(ながさき経済web調査、2025年)。平日でも1万人以上が来場する「日常の集客装置」です。

Q: V・ファーレン長崎のJ1昇格後の観客動員は?

2025年シーズン(J2)で1試合平均観客数はJ2リーグトップクラス。旧スタジアム時代の約7,300人から約2倍に増加しました(東洋経済オンライン)。2026年からJ1リーグで戦っています。

Q: このモデルは他のスポーツクラブでも参考にできますか?

髙田旭人社長は「日本中の経営者が真似できるモデル」を目指すと明言しています(ANA翼の王国)。約1,000億円規模の投資は限られた企業にしかできませんが、本記事で解説した5つの再現可能な設計原則(非試合日コンテンツの設計、ファン以外の巻き込み、空間の多目的利用、データ活用、体験の商品化)は、規模を変えてどのクラブでも応用可能です。実際に私たちも、この長崎モデルの設計原則をベースにした戦略提案をお手伝いしています。

Q: スタジアムブルワリーはどんなビールが飲めますか?

THE STADIUM BREWS NAGASAKIでは、10基のタンクで年間約100種類のクラフトビールを醸造しており、季節ごとに新しい味が楽しめます(ジャパネットHDプレスリリース)。サッカースタジアム併設のブルワリーは、ジャパネットHDの発表によると国内初の事例です。

7. あなたのクラブの「次の一手」を、一緒に考えませんか

長崎スタジアムシティが証明したのは、スポーツクラブの経営は「試合の勝敗」だけで決まらないということです。

経営危機のJ2クラブを買い、スタジアムを建て、J1に導き、年間485万人が訪れる「街」を作った。この物語のスケールに圧倒されるかもしれません。でも、この記事を通じてお伝えしたかったのは、1,000億円の投資額ではなく、その裏にある設計思想の再現性です。

改めて、長崎モデルから抽出した5つの設計原則を振り返ります。

  • 「試合日以外」を設計する — スタジアムカフェ、朝ヨガ、キッズプログラム。規模は問いません
  • 「ファン以外」を巻き込む — 地元飲食店とのコラボ、マルシェ、子ども向け体験。スポーツに関心がない人が来る理由を作る
  • 「空間の多目的利用」で稼働率を上げる — VIPルームの企業イベント転用、ラウンジの貸し会議室化。使われていない時間を収益に変える
  • 「データで語れるクラブ」になる — チケット・グッズ・飲食・SNSのデータを統合し、ファンの姿を可視化する。スポンサー提案力が変わります
  • 「体験」を商品化する — スタジアムでしかできない非日常を、観光・MICE・記念日コンテンツに展開する

どれも、明日から着手できるものばかりです。

私自身、長崎県のデジタルコーディネーターとして、また観光審議委員として、スポーツと地域の可能性を間近で見てきました。そして長崎スタジアムシティを実際に訪れ、その「空気」を体感したからこそ、この設計思想の力を確信しています。

なお、スタジアムに限らず自治体の情報発信全般に関心がある方は、自治体のYouTube活用完全ガイドもあわせてご覧ください。動画広報の費用やKPI設定を実例付きで解説しています。

「うちのクラブでも、何かできることがあるんじゃないか」— もしそう感じていただけたなら、ぜひお気軽にお声がけください。

Marumakeは、AI×戦略設計で企業のマーケティングを支援するコンサルティング企業です。スポーツチームのブランディング、ファンエンゲージメント戦略、非試合日の収益設計、デジタルを活用したファンデータ基盤の構築まで、クラブの「次の一手」を一緒に考えます。

まずはお気軽にご相談ください。現状の分析から始めて、御社のクラブに合った戦略をご提案します。

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出典一覧

#出典発表元
1長崎スタジアムシティ プロジェクト概要長崎スタジアムシティ公式2024
2髙田旭人社長インタビューANA翼の王国2024
3ジャパネットが描く新たな地域創生EY Japan2024
4髙田社長の地域創生4象限日経クロストレンド
5開業1年で485万人来場日本経済新聞2025
6試合がない日も1万人のスタジアム東洋経済オンライン2025
7開業半年レポート・来場者650万人目標ITmedia Business2025
8来場者意識調査(開業半年)ながさき経済web2025
9PEACE STADIUMピッチ距離「全方向で国内最短約5m」ジャパネットHD2023
10年間経済波及効果963億円長崎新聞2024
11髙田社長「市中心部への波及はまだ」長崎新聞2025
12V・ファーレン長崎 観客動員・J1昇格・売上40億円規模東洋経済オンライン2025
13THE STADIUM BREWS NAGASAKIPRtimes(ジャパネットHD)
145G・スマートスタジアム基盤ソフトバンクニュース2024
15Autonomous Stadium構想未来図(MIRAIT ONE)2024
16スマートスタジアム市場予測Grand View Research2025
17Tottenham非試合日収益£55mThe Stadium Business2024
18Deloitte Football Money League 2025Deloitte2025
19スタジアム・アリーナ改革指針21拠点達成経済産業省2025
20三菱重工幸町工場跡地売買契約三菱重工業2018
21長崎市推計人口(2026年4月)長崎市2026
22パナソニックスタジアム吹田 建設経緯市立吹田サッカースタジアム公式
23V・ファーレン長崎 経営危機と再建日経ビジネス
24髙田明氏 社長就任の経緯東洋経済オンライン
25Jリーグスタジアム基準Jリーグ
26V・ファーレン長崎 J1昇格日本経済新聞2025
27Deloitte TMT Predictions 2025Deloitte2025
28長崎スタジアムシティ グルメ情報長崎旅ネット2025
29開業1ヶ月55万人来場長崎新聞2024

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